皆さんは漢方薬、に対してどのようなイメージを持っているでしょうか?
以前は「苦い」「飲みづらい」といった声をしばしば聞きました。
しかし最近では、製薬会社のアンケートでも「副作用が少ない」「体質から改善してくれる」など、ポジティブに受けとめる方が多くなってきています。
病院や診療所で使われる多くの薬は西洋医学に基づくもので、ほとんどは一種類の、ある特定の効果を発揮する(細菌をやっつける、血圧を下げる、アレルギー反応を抑える、など)成分でできています。
臨床試験により、効果が認められ安全だと確認されたもののみが薬として処方できることになっています。薬を使っている間は効果がありますが、服用をやめると薬の効果はなくなってしまいます。
ですので、長期間にわたって、中には一生涯、飲み続けなくてはいけないものもあります。
一方漢方薬は、もともとは中国で用いられていたもので、生薬と呼ばれる薬草を処理したものを何種類か、場合によっては十種類以上も調合したものを薬として用います。1000年以上の長い経験により、様々な症状に対して効果のある組み合わせが見つかり、現在にまで伝わっています。西洋のお薬のように臨床試験が行われたものは少ないです(最近徐々に増えています)が、長年の使用によって効果の少ないもの、危険なものは使用されなくなり、効果があり安全性の高いものが生き残っています。
漢方の考え方では、体質のバランスを重視します。「証」、「気・血・水」とよばれる二つの物差しを使い、体が本来あるべき状態からどちらかに傾いているために様々な症状が起きると考えています。そして、それを元に戻すための手伝いをしてくれるのが漢方薬です。
西洋の薬、漢方薬、どちらが優れている、ということではなく、使いわけていくことでさまざまな病気、症状に対し改善することができると考えています。
西洋の薬は一般的に効果が早く、効き目もしっかりしています。漢方薬は即効性のあるものもありますが、おおむね効果がゆっくりですが、西洋の薬で対応しづらい症状や、なんとなく体調が悪いといった場合にも効果が期待できます。
耳鼻咽喉科でいえば、めまい・ふらつきや、のどの違和感などが代表的な症状ですが、アレルギー性鼻炎や口内炎、咳・痰、インフルエンザなどにも効果があるものがあります。最近問題になっている嗅覚障害に対しても、ある種の漢方薬の効果が学会などで報告されています。
体の状態を伺い、診察し、最適と思われる治療を一緒に考えていきましょう。
漢方は苦くて飲みにくい、と敬遠されている方もおられると思います。最近は以前からある顆粒状の製剤だけでなく、錠剤になっているものもあるので、粉が苦手な方でも試していただけます。
お子さんにも有効なのですが、やはり飲ませづらいと思います。そこで、コーヒー牛乳やココアなどに混ぜると苦みが弱くなり、おいしく飲んでもらえることが多いです。ヨーグルトや乳酸菌飲料、ジュース・スポーツドリンク、意外なところではアイスクリームなども好評のようです。(論文もあります:森蘭子 小児外科43(8)828-831,2011)
副作用や飲み合わせに関する注意は比較的少ないですが、全くないわけではありません。最近は薬局さんでも直接買えるものが増えていますが、少なくとも一度は医療機関を受診し、飲んで問題ないかご相談いただくことが望ましいと考えております。